* アーティスト名 : れいと

28th.346-350 : 名無しのエリー2016.12.23.

1.馬鹿な奴★★★★

いきなり衝撃的な曲からこのアルバムはスタートする。
不穏なトラックに乗せて首吊りを試みながら白い粉を吸い、自堕落な生活を送る少年を主人公に日本の闇を描いたリリックは重たく暗いが
「鯨に喰われろ」「ハサミを使って鼻クソほじる」など所々にユーモアも感じるフレーズを挟んでくれるのがせめてもの救いである。

2.言いづらいこと★★★★☆

仕事もせずに酒浸りで家族に暴力を振るう父親を持つ少年の視点から家庭崩壊を描いた曲。
どうしようもなく救いのない内容だが、最後は主人公が涙ながらに
「父さんはいつも威張ってるけど甘えてる自分の弱さにも強さにも 僕は父さんが本当は誰よりも強いって知ってるよ」
と訴えかける描写は感動ものだ。

3.鼓動★★★☆

後に彼のキャッチコピーにもなる「地方都市のどうしようもない少年の日常」を描いた曲だ。
合コンで同じクラスの万引き魔と居合わせてしまったり、トイレを借りに行ったコンビニでバイト先の先輩に遭遇し金をせびられるなど、
主人公の日常は本当にどうしようもないことの連鎖だ。
しかし、フック(サビ)のリリック(歌詞)からは明日への期待が感じられ、前2曲よりもユーモアも多く盛り込まれており、救いがある。

4.海の底へ★★★

それまでの曲とはまた雰囲気が一転し、比喩を用いた詩的な曲。言葉が詰め込まれたエモーショナルなフロウに圧倒される。
「アイツの曇り無き瞳からは決して自分を隠せない」
このリリックが刺さる。

5.パシリ★★★☆

お得意の物語系ラップだ。友達の中でも下っ端の主人公が命令されひたすらパシられる曲。
しかしこれ実際にはパシリというよりイジメに近い。それに誘拐までさせるって犯罪では...w
だが「明日からは断ろう」と繰り返すフックは異様に耳に残る。
実際に主人公は断ったのだが、その後どうなってしまったのかは煙っている。

6.目隠し★★★

向かいの家の優しいおじさんが空き巣をしているのを目撃してしまい、学校では隣の席の美少女が鼻をほじっているのを見てしまう主人公。
必死に見ていないフリをするが本心が耐えられなくなる。
重い曲が多い中、肩に力を入れず聴ける箸休め的な曲。

7.赤い包丁★★★

コンビニでバイト中に強盗に腹を刺された主人公。その後、彼はその経験から「赤い包丁」というバンドを結成する。
しかし、そのバンドも揉め事で空中分解し、ボーカルが自殺未遂をするというまたも不幸の連鎖。
結局夢を諦めたのか、それともまた巻き返していくのか、最後にフックを繰り返しうやむやな感じで終わるのはM5と似てる。

8.過去の人★★★☆

少し間抜けだが流麗なピアノのフレーズに乗せて「さようなら、今までありがとう」と世界に別れを告げる曲。
楽しかった日々も空っぽの過去になってしまう寂しさ・虚しさを綺麗に描いている。

9.人間の最後★★★

綺麗な前曲とは一転し、不気味なトラックで鬱々としたリリックが続く。
フックの「シャツをズボンに入れて下さい 宿題のプリントやりましたか」が異様に耳に残りいい意味で気持ち悪い。
ここでも不幸の連鎖が続く主人公の妄想とも取れる頭の中の言葉が正直に爆発した曲。

10.行方不明★★★★

父親に殺された主人公の曲。
3年経っても父は逮捕されず、成仏できていない主人公。家族の中では行方不明者扱いされているようだ。
これほどまでに悲しく寂しい曲はなかなかない。

11.真っ黒な光★★★☆

ピアノの低音不穏な雰囲気を醸し出し、灰の香りがするほど仄暗い曲。
特に引っかかる言葉がないため、今までの曲と比べると印象が薄いのだが、このアルバムのタイトル「明日など来るな」が登場し、
後にリリースされるベストアルバム「真っ黒な光」のタイトルになることから、彼にとって大事な曲であることが分かる。
ただ声を重ねているせいかフックの「さざ波」が「様神」と聞こえてしまうのが残念。業界用語ではありません。

12.言葉★★★

現実逃避するために過去を回想するはずが、その過去も全て暗く、祖父がくれた言葉を唱える。
しかし大人になるとその祖父も逝ってしまった。
実際に小学生時代にイジメにあい、大人になってからはイジメとはまた違う”無視”を受けてきた自分は
「今の敵は昔とは違う 誰もパンツを下げたりはしてこない」というリリックにはドキッとさせられた。

13.未定★★★

レコードのノイズ音のような音と共に「段ボールで猫が眠っている 裸足で子供が走っていく」などと、
部屋から見た街の風景を断片的に詰め込んだリリック。
アルバムのラストに相応しい静かな曲。眠りたくなってくる。

総評.★★★★☆

ラップ界の異端児・レイトのデビュー作となる1stアルバム。
社会問題や少年の日常を歌ったラップは全曲重く暗く、通して聴くには体力が必要。
幼少期、弟のために物語を作って読むのが好きだったいう彼の描くリリックは韻を踏むことよりも物語性を意識している。
そのため当時は賛否両論を巻き起こしたがREMIX誌の選ぶベストディスク2008年にランクインする。
M1~3は公式からYouTubeに公開されているので一聴の価値アリ。

(★:2点,☆:1点の計10点満点。)

28th.355-357 : 名無しのエリー2016.12.25.

1.さよなら昨日★★★☆

学校にも家にも居場所がないいじめられっ子の悲痛な叫び。
しかし前作で「明日など来るな」と言っていた彼が「昨日までの自分にさらば」「本当にこれでいいの?」と歌い出した。
成長を感じられる1曲。

2.巨人★★★☆

孤独な巨人が主人公の壮大な曲。
畳み掛けるように街の様子と巨人の心情を綴る描写はまるで映画を見てるような感覚だ。
巨人が地を踏むようなリズムのトラックも◎

3.流星★★★★★

残り少ない青春の輝きを歌った曲。
2番終了後にブレイクダウンしてそれまでの青春を謳歌する内容から一気に現実に引き戻されたように
全てが過去になっていく虚しさを描いたリリックになる所が良い。
今までの曲よりもフック(サビ)はメロディアスに仕上がっている。RADWIMPSあたりが歌ってそうな感じだ。

4.鴉★★★☆

一貫して日々の闇や行き場のない怒りを歌った曲。
他の曲よりも激しく叫ぶような歌唱は最早ラップというよりもロックだ。
当てなどない毎日を空の向こうで見守っているのは真っ黒なカラスなのだろうか。
社会派な一曲。

5.人間の最後 -竹久圏 MIX-★★

1stアルバム「明日など来るな」収録曲のリミックス。
アコギの音色は綺麗だがこれは、うーん。

6.言葉 -SHIN-SOOBUM MIX-★★★

こちらも1stアルバム収録曲のリミックス。
原曲では少しチープだったトラックを今作用にアレンジしたような仕上がりだ。

7.過去の人 -黄泉路 MIX-★☆

前2曲同様、1stAL収録曲のリミックス。
なんかリミックスとしてありがちな感じ。原曲の持つ寂しさは消えてしまった。

8.駄目★★★

ここに来て新曲。
ダラダラと日々を過ごす少年のダメダメな日々を歌ったラップらしい曲で、この曲だけ今作の中では異質だ。
前作に収録されていたら違和感ないと思うが。
まぁそれを考えた上でこの曲順にしたのだろう。

9.さよなら昨日 -森雄太ミックス feat.マリヲ-★★

うーんww これはお遊びかな...
重い内容が続いた中、肩に力を入れずに聴けるクールダウン的トラック。

総評.★★★☆

デビューアルバム「明日など来るな」が各方面で話題となり、REMIX誌のベストディスクに選出され、
フジロックへの出演も果たしたレイトの初となるミニアルバム。
前作ではトラックはチープな感じの打ち込みだったが今作ではロック調のものが目立つ。
リリックは前作よりも前向きな姿勢になっているが、「タケシ」「秋山さん」などの特定の固有名詞を使った物語を1曲の中に収めるのはさすがだ。
新曲5曲+リミックス4曲で1,300円という価格も◎

(★:2点,☆:1点の計10点満点。)